ドロテア誘拐犯
「お待たせしました」
昨夜も奴隷商による経緯の確認がされた後からは口調が変わっていたが、引き続き今朝も丁寧な口調のままである。
「まず犯罪者の捕縛にご協力に感謝します。彼らの装備品はこちらになります。誘拐に関与したと思われるものは鑑定済みです」
ブロードソード、ショートソード、ダガーなどがテーブルの上に並べられていく。暗器と呼ばれるような金属の串のようなものまで出てくる。
「こちらのダガー1本だけが魔道具で、≪睡眠≫効果のあるものでした。これで傷をつけて誘拐する手口だったようです」
「首筋の小さな傷はそういうことだったのね」
「その他の財布等もこちらになります。これらはすべて皆さんのものになります。こちらで引き取りするものはありますか?」
特にヨルクの方を皆が見て頷くので、シミリートが代表して答える。
「いえ、全部こちらでいただきます」
「そして、ここからが本題です。“蒼海の眼”というクラン名に心当たりは?」
皆の顔色が変わったのを確認した衛兵が話を続ける。
「やはり、あの騒動のときのパーティーでしたか」
「え、そんな。もうあのギルドの生き残りはみんな捕まえたって」
「はい、それは間違いではありません。ただ、“闇ギルド”を除いて、という条件付きになります」
「ということは」
「はい、この3人は“闇ギルド”になっていた元“蒼海の眼”メンバでした。話を聞くと、顔がわかっているカミラさん?と一緒に居た魔法使いのローブの女を狙ったとのことです」
青ざめるユリアンネ。自分だと思ってドロテアが狙われたと理解したからである。