久しぶりのガラクタ市3
「やっぱりヨルクは買い食いばかりか?」
「ちゃんと素材にできそうな折れた剣なども買っておいたぞ。言い訳程度だけれどな」
日も暮れだしたとき、待ち合わせ場所にはヨルクとゾフィの組が待っていた。
「こっちはユリが少し珍しい薬草を買ったのと、俺はこれだ」
買ったばかりのダガーをヨルクに見せて喜んでいるシミリート。
「それにしても遅いな。カミラとテアは」
「まさか、何か犯罪に巻き込まれて……」
「いや、あそこに見えたぞ。テアが両手にいっぱい。あれは食べ物か」
「本当ね。でもヨルクじゃないのに、なんであんなに?」
「おい、なんだ、アイツら。テアが横道に連れ込まれた!行くぞ!」
「そんな!待って!」
人混みで離れ離れになりそうな中を、シミリートが先に駆け出していく。ユリアンネとゾフィ、そして背の低いヨルクは簡単には付いていけない。
「シルヴィス!」
ユリアンネは腕輪になっている使い魔に命じて、ドロテアを追わせる。
人混みをかき分けて横道にたどり着いたところでは、地面に食べ物が散らばっている。
「ユリ!」
ゾフィの声の前に、すでにユリアンネは目をつぶりシルヴィスの視界を確認している。3人組の1人の肩に担がれたドロテアを、シミリートとカミラが追いかけている。
「あっちよ!」
位置関係が把握できたユリアンネの指示に従って、人混みから離れていく誘拐者と仲間たちを追いかける。しかし、ユリアンネの体力ではこのまま追いかけるのは無理と自覚できる。
「ゾフィ、後をお願い」
と言いながら、自身は立ち止まり再びシルヴィスの視界を確認し、シミリートがもう少しで追いつきそうなことに安堵する。シルヴィスを突進させたいが、ドロテアを担いでいる男だと彼女も傷つける可能性があるので並走する男を狙う。