盗賊
「くそ、やっぱりか」
警戒していたシミリートがヨルクに飛んで行った短剣を盾で弾きながら、片手剣を抜いて構える。
同じく警戒しつつシミリートとヨルクに挟まれるように立っていたユリアンネは、ここまで連れてきた男、そして寝ていた男に連続して≪火炎≫を発動する。はじめて人に攻撃魔法を発動することになったのだが、そのようなことを考えている間はない。
「うわ、だからタイミングに気をつけろと言っただろう!」「ほら、急げ!」
連れてきた男が上半身に着いた火を、上着を脱ぐことで少しでも被害を減らそうとしながら愚痴り、そして誰かに合図を出す。
「わっちっち。そう言うなよ」
怪我して寝ていた男も同じように上着を脱ごうとしながら余裕が感じられる。
「まぁこういうことだ。大人しくして貰おうか」
弓矢を構えた男4人が岩場の陰から現れる。
「子供なりに警戒はしていたようだが、まだまだ甘ちゃんだな。それに他人の治療までするなんてな」
「うるさい!」「逃げるぞ!」
シミリートが目の前にいる怪我していた男に切りつけながら、引き続き仲間の名前を呼ばないように意識する。ヨルクは弓矢の男達の方に対峙したのだが、シミリートが切りつけながら進んだ方向に後ずさりする。ユリアンネは新たに現れて発言した男にも≪火炎≫を発動しながらシミリートの後を進む。
「逃すな!」「待て!」
「そう言われて待つ奴が居るか!」
自分達が来た、仲間達が野営している方向が寝ていた男の方向であり、そちらに向けて駆け出す。火が着いていない弓矢の男3人が矢を放ってくるが、ジグザグに避けながら走るのと、シミリートの盾で何とか防いでいる。