他冒険者2
「ほら、他のことを気にしているから怪我が増えたんじゃない?」
「すまない……」
どうしても魔物の攻撃を受けやすく怪我が増えるシミリート、ジーモント、ヨルク。彼らに薬瓶を使用して来たが、残り数量が怪しくなって来た。
「この6人で21階層の複数魔物の相手はまだ難しかったのかもね。シミとユリは銅級相当でも、私たち4人はまだまだ鉄級ということね。銅級相当のCランク魔物を相手には……」
「あぁ、だがシミの卒業記念に何としても22階層にはたどり着いてやろう」
心では思っていたカミラの発言に皆が同意しつつ、ジーモントの発言にも賛同する。
「よし、薬瓶が残り少しになったら、ユリはポーションではなく回復魔法を使ってくれ。魔力の温存より安全が優先だ。ユリに何かあったときのための薬瓶は最低限残してくれよ」
「分かったわ」
「ゾフィ、進行上で邪魔にならない魔物は無視して放置することにしよう。今まで以上に、遠回りすればよい魔物も無視して戦闘を少しでも回避しよう」
シミリートが皆の訓練よりも21階層踏破を優先するように方針変更を決める。皆も同意で、それまでより進行速度を上げる。
その効果であろうが、訓練重視であったインハルト率いる領軍とは離れていき、別の領軍も遠くに見かけるが、今夜の野営地では他の冒険者達とも距離をあけた6人だけの焚き火となる。
戦闘量を減らしはしたものの、怪我は回避できず、ユリアンネの初級回復魔法≪治癒≫は何度も使用することになった。これも“オトマン書肆”に流れて来た魔導書から習得したものだが、それまでに習得済みの水や火の魔法と違い、治癒相手の魔力に自身の魔力の波長を合わせて相手の身体の回復能力を活性化するものであり習得には苦労した。
攻撃や回復に魔力をたくさん使用したユリアンネの魔力回復を優先するため、彼女以外のメンバで野営準備を行い、彼女には目を閉じてリラックスさせている。
「すまない、ちょっと良いかな?」
既に暗くなった時間帯に、焚き火から少し離れたところから声をかけてくる者がいる。