ワイバーン、再び3
ルオルゾン領とストローデ領の境目にあるモンヴァルト山脈を越えている最中の一行。地龍を少しずつ倒しながら東に向かいつつ、現れた飛龍も倒して野営をしているところである。
「ユリ、新しい魔法の練習に使えそうな素材をせっかく入手したのに、この様子ではしばらく試せないよな」
「シミ、そんな大きな声で。悪魔魔法や死霊魔法なんて忌避する人は絶対にいるんだから」
こそこそ小さな声で返事をしたユリアンネに頭を下げるシミリート。
「あの使い魔もすごく役立っているし、ユリが新しい魔法を覚えるたびに俺たち“選ばれた盟友”は強くなっている気がするよな」
「私だけではないでしょ。みんな成長していっているわよ」
「だがな、エックハルトさんの槍の武技、あらためて見ると自分もまだまだと思わされたよ」
「相手は金級冒険者。こちらは成り立ての銀級冒険者。それに成人してそれほども経っていないんだから、まだまだのびしろはあるわよ」
「そうだな。また落ち着いたら道場に通ったり、ダンジョンで魔物退治の訓練をしたりしたいな」
「そのためには早くにトリアンに帰らないとね」
どうしても知り合いが無事か不安になるが、今は少しでも東に進むしかない。
夜警の当番が終わり寝ているところをカミラたちに起こされるユリアンネたち。
「大変なの!ワイバーンが来ているの!それにレイスも!」
「え!」
慌てて飛び起きて、杖を片手に上空を見上げる。確かにワイバーンやレイスが見える。
「ということは、あの吸血鬼ダニロがまた来ているのね」