ワイバーン、再び
地龍たちを少しずつ倒しながらときどき休憩を挟む一行。
その騒動を気にしたのか、山脈の上の方から飛龍が降りてくる。
「うわ、ワイバーンが来たぞ!」
覚悟はしていてもAランク魔物の登場に焦る集団。シミリートとユリアンネが前に出ようとしたところを、エックハルトが飛び出してくる。
「待った!あのワイバーンは俺にやらせてくれ!」「シグ!」
「はいはい」「すみませんね、ドレイクばかりで飽きていたようで」
Bランク魔物の退治に飽きるというのも金級冒険者ならではなのか。シグランと二人、戦馬で少し広めの足場が確保できる場所に移動する。
シグランが戦馬の足をとめて、腕を大きく振り回して呪文を詠唱し、緑色の魔法陣から強風をワイバーンに向けて飛ばす。ワイバーンが滑空して降りてくる狙いをシグランに定めたようで、方向転換してくる。
「シグ、流石だ。よぉし!」
エックハルトがその前に戦馬ごと前にでて、槍の武技≪飛斬≫を飛ばす。それでも接近してきたワイバーンに対して、≪急所≫≪剛撃≫と武技を繰り返し発動していく。標的をシグランからエックハルトに変えたようだが、ブレス、噛みつきや尻尾攻撃をするいとまが無いまま槍攻撃を受け続ける。
一度上空に逃げ出そうとするが、再びシグランの風魔法で押さえつけられたようで上手くいかず、結局はエックハルトの槍攻撃を受け続け地面に落ちて行く。
あまりの早技に声をあげる間もなかったが、ワイバーンが地面に落ちたのを見た冒険者たちが歓声をあげる。
「流石は“流星”!」
「すごいぞ、金級冒険者!」
しかしニキアスが制止してくる。
「皆さん、足元のドレイクを忘れています!気をつけて!」
「おぉっと危ない、危ない」
「俺たちも負けていられないな」
安全に行くために単調になっていたドレイク退治の中での興奮材料である。調子に乗っての怪我が怖いのですぐに休憩に入り後退を指示するニキアスであった。