モンヴァルト山脈での夜襲
ゾフィが人知れずもやもやした気持ちで当番を終わり、シミリート、ユリアンネ、ドロテアの3人の順番になる。
「お、ちゃんと周りの人たちも当番を交代しているみたいだな」
「この集団規模でも上位ハイオークたちは襲ってくるのでしょうか」
「テア、可能性はあるよ。夕方までにだいぶ退治したけれど、またどこかで湧いているかもしれないし、この灯りを見て近づいてくるのもいるかもしれない」
「シミ、脅かしすぎないの」「テア、あくまでも可能性よ。前回もなかったでしょう?」
「はい……」
「もしかすると、もっと別のが襲ってくるかもしれないぞ」
「シミ!」
そのシミリートの言葉が呼び水になったのか、変な風が吹いてくる。それぞれのかまどの炎が揺れ出す。
「なんか変な感じだな」
「あっち!」
冒険者たちの方で悲鳴が上がっている。
「何だ!?ええい!」
シミリートがさっそく空になっていた金属鍋を叩いで皆を起こす。同様に警戒の音があちこちで鳴り響く。すると魔術師団員の誰かが空に向けて魔法を発動して、辺りが明るくなる。他の団員も次々と同様の魔法を発動したのか、野営地全体がそれなりに明るくなると、悲鳴がした方の上空に何かが飛んでいるのが見える。
「ゴーストか?いや、レイスか」
明るくなって魔物がわかるようになると、冒険者たちも剣を振るったり矢を射ったりするがダメージを受けていない感じである。
「レイスは魔法か魔法の武器でないと攻撃が通らない!」
ここの集団はそれなりに知見のある者がいるためそのような声が上がり、魔術師団員たちが攻撃魔法を発動する。下手に発動すると味方にも当たるため、外に向けた槍系魔法の発動が多い。
「くそ、今度はこっちからも!いったい何体いるんだ!」