モンヴァルト山脈の西2
「これで何とか落ち着きましたかね」
何度目かの上位ハイオークたちとの戦闘も終わり、日も暮れて来たので一息つく集団。
「そうですね、もうかなり上まで登って来ましたね。あのあたりからは東に向けて平な移動になりますね」
「はい、いよいよ地龍たちの棲家ですね」
「ではここで野営をすることにしましょう。ジーモントさんの料理が楽しみです」
「上位ハイオークをふんだんに使って貰いましょう」
シミリートと会話していたニキアスが集団全体に号令をかけたことで、皆が街道の周りにも広がりかまどの設営など野営の準備を始める。
「やっと晩飯か。ジモ、肉をケチるなよ」
「ヨルク、分かっているよ。特にお前にはハイオークファイターの脂たっぷりのスープを用意してやるよ」
「はぁ」
「カミラ、どうしたの?」
「細身のユリやゾフィは良いわよね。私はこんな上等な豚肉ばかり食べているとお腹周りが気になるのに」
「カミラは太ってなんかいないだろう?」
「ヨルク、あんたとは比較していないわよ。そんなにお腹が出て来ていて。戦うのに邪魔じゃないの?」
「斧を振り回すのには困っていないぞ。それより美味いものを我慢する、非難するなんてジモに悪いだろう?」
「そういう意味じゃないわよ……」
普通の体格のカミラではあるが、近くに細身の仲間がいることを気にしているようである。ショートソードを振り回してカロリーを消費するから等を言うと余計に地雷になりそうなので黙っているユリアンネ。
「残るならば貰うぞ」
「ヨルク、あげないわよ。ジモが作ってくれた私の分じゃない」
一応は護衛依頼を受けた冒険者として周りの警戒はしているものの、緊張感を持ちすぎていない仲間の雰囲気に安心するシミリート。特に前回に怪我をしたカミラがそのことに気負いすぎていないようでホッとする。