野営
魔物の数が3体を超えると、ヨルクが斧で受けにまわる分、ヨルクの怪我が増える。結果として戦闘後の治療対象が増えて戦後処理にも時間がかかるようになり、進行速度が下がってしまった。
草原とはいえ、少しは起伏もある上に岩場と呼べるぐらいに大きな岩が転がっている場所もある。
ちょうど夕方ぐらいにその岩場の一つにたどり着いたので、野営の場所とする。
遠くを見渡すのに邪魔になる大きい岩だと、見張り番の負担も大きくなるが、適度な大きさであると全方位が平面の草原の場所より、気持ち的に安心して睡眠をとることができる。
火を焚いて夕食の準備をしていると、昼食のときに遠くに見ていた領軍の10人が近づいてくる。
「我々はご覧の通り領軍であるが、この近くで野営をしても構わないかな?」
「はい、もちろんです。安全度が上がりますのでぜひお願いしたいです」
「ははは。信じて貰えてありがたい。では」
ダンジョンの中では、他の冒険者パーティーとは適度な距離を保つことが望ましいと言われている。相手が万が一にも盗賊の可能性があるからであり、さらにそれを互いに警戒すると無駄に精神疲労がたまり、魔物を相手にした時などに全力を出せないことにも繋がりかねないからである。
しかし今回は兵装での集団行動も確認しているし、この数の兵に対して魔物や盗賊が襲ってくる心配もなくなるので安心である。
「ところで、君達のパーティーはきちんと21階を進めているな。Cランク魔物にまともに対峙できる魔法使いだけでなく、武技も使える戦士が居るようだな」
“選ばれた盟友”の6人は21階に到達した後は、魔物がCランクと強くなったこともありまともに21階に挑戦していなかったので、今日は移動の合間にも遠目に見える他の冒険者たちの様子も見ていた。20階までと違い、武技の発動ができている者をちらほらと見ることができた。
おそらく全員がまともに武技を発動できるパーティーならば、どんどん下の階層に進むはずであり、この階層で見かけるということはほとんどがそこで足踏みしているのだと思われる。




