武技
昼食休憩が終わった6人は、午前中と同様にできるだけ先に進むために、魔物とは最低限の戦闘となるように少しぐらいの迂回を入れながら北東にあるはずの下階への階段を目指す。
魔物も3体までであれば、午前のようにジーモント側で少し怪我が出ることがあっても無事に倒せていたが、ハイオーク4体との戦闘が避けられなかった。
遠隔攻撃でほぼ1体を倒せても盾役が2人しか居ないので、ドワーフという種族がゆえに小柄ながらにヨルクが戦斧で敵の攻撃をいなす分担を行った。
結果として、ユリアンネの火魔法とゾフィの弓矢により1体減った後は、ジーモントとシミリートが1体ずつ受け持ったハイオークを盾で防衛しながら片手剣で攻撃もしてしのぐ横で、ヨルクが防御中心に、カミラの片手剣、ゾフィの弓矢、ユリアンネの火魔法で攻撃してさらに1体を減らす。そしてジーモント側とシミリート側にいつも通り分かれて最終的に4体とも倒し切る。
「あー、疲れたなぁ」
「シミは何度も武技≪斬撃≫を発動させていたな」
「あぁ、練習と違って緊張感があって集中できたからかな」
この6人で武技、アーツとも呼ばれるものを習得できたのはユリアンネとシミリートだけである。
魔力操作と言われていたように、ユリアンネはダガーに魔力を込めて突き刺すと威力が向上することを確認し、後からそれが短剣武技≪刺突≫であったと知る。ただ、基本的に戦闘では魔法を使うのでダガーは使用していないし、どうせ魔力を消費するならば魔法発動に使用するつもりである。
シミリートは感覚で何となく覚えたのだが、その勢いで魔法習得に挑戦させてみたユリアンネの狙いも失敗する。魔力操作が適当な感覚だけであり、魔法のイメージや魔術語のことは分からないというシミリートの先入観、思い込みも足を引っ張った可能性もある。
魔法を含めて他の4人にも何度か武技と魔法を教えようとしたが成功していない。
先輩冒険者オイゲン、ヒンツ、ロルトの3人でも、魔法使いはロルト1人だけであったことを振り返り、効率的な習得方法がないものかと考えているユリアンネであった。