領軍
再び怪我したジーモントの治療が終わったところで、約束通りの昼食になる。
「新鮮なうちに焼いて塩をふっただけで十分に美味しいからな」
ヨルクがムードメーカーになり明るく楽しませてくれる。
「しかし早めの昼食とはいえ、敵との遭遇が少なくないか?」
「きっとアレが原因だろうな」
遠目に見える隊列をシミリートが指差す。
「お、シミの先輩か?」
「厳密に言うとちょっと違うかな。領主様の兵という意味では一緒だけど、俺がなるのは衛兵だからな。衛兵は街で住民の安全を守るのが主な仕事だから、兵装でダンジョンに潜ることはないよ。ほら、皆が揃った装備で、半分は片手剣と盾、半分は弓、それに胴だけ金属のハーフアーマーだろう?」
「じゃああの人たちは衛兵ではなく領軍の方か。訓練で10人ほどが来ている感じなんだな」
「あぁ、この迷宮都市の領軍は他国と戦うことも想定してあるが、迷宮の魔物討伐が本業みたいなものだからな。この階層ってことはまだまだ新兵に近い人たちなんだろうな」
数人の弓矢班が遠くの魔物に攻撃し、寄って来たところで片手剣と盾の班が殲滅しているようである。ただ、見ていると一部の人間の片手剣の威力が高いようである。
「お、武技を使える人が混ざっているようだな」
「毎回発動させているみたいだからしっかり習熟できているようだ。伍長か兵長あたりかな」
「シミもたまには発動できるようになったんだから、この先に期待だな」
「あぁ任せておけ!」
「じゃあ21階層の踏破を優先したい私たちには、他の魔物討伐者が居ることに感謝して出発しましょう」