ハイオーク2
「ジモ、大丈夫か?」
駆け寄ってくる仲間達だが、ジーモントが身振りで大丈夫と返す。
座り込んで傷を負った右腕と左足を投げ出し、衣服をめくったところへユリアンネが取り出した薬瓶の中身をかける。
「ユリ、いつも助かるよ。単なる傷回復薬と違って直ぐに治る魔法回復薬は本当すごいよな」
「(確かに前世には無いことよね)そうね。魔素のおかげね。いえ、魔力の込め方を教えてくれたお父さんのおかげよ」
「いや、それを頑張って習得して使ってくれるユリに感謝なんだよ」
高級回復薬まで調合できるラルフを比較対象に、自分はまだ中級までと卑下しているユリアンネではあるが、自分の薬が他者を治癒することの効果を実感できており、前世からの薬師志望に対して少しずつ叶って来ていることに満足している。
治療されたジーモントが服を戻してから3体の解体に向かう。
「女性陣には脂身の少ないヒレ肉。俺たち男性陣は脂身に旨みがあるロース肉。首のトントロもコリコリと歯応えのある希少部位。今回は少しずつしか運べないからこんな物かな」
「もう我慢できん。あと一回戦闘したら昼飯にしようぜ」
「ヨルク、分かったよ。ただ酒は無いからな」
「一足早く成人したのに。まぁダンジョンだから仕方ない」
敵が3体の段階で怪我人が出たことから少し不安になる者も居るが、その空気をかき消すようにヨルク達が気をつかっている。
それが分かっている仲間達は明言せずに先に進む。
そしてサーベルタイガー3体に遭遇したところで、先ほどと同様に遠隔で1体、近寄って2体を分散して倒す。ただ、ジーモントが防御に専念してみても足元の怪我は無くすことが出来なかった。