吸血鬼モラク2
「さぁこれで逃げられないでしょう」
念の為に代官館でも地下室に凍らせたモラクを運び込み、尋問を始める。
周りには“選ばれた盟友”の7人以外に、ニキアスだけでなくアナスガー以下、代官館の男たちも武装しつつポーションを持たせているため、万が一に逃げ出してもそれを振りかける準備をしている。
「さぁ、色々と吐いて貰おうか」
「マルゴットがもう居ないとはどういうことだ!」
アナスガーが最初に口火を切る。
「あら言葉の通りよ。魔物が溢れて騒動になり出した頃、その隙に成り変わったのよ。当然、彼女は邪魔になるから血を吸って死んで貰ったわ」
「なんだと!」
「ダメですよ!アナスガー様。こいつはあなたを怒らせて楽に死のうとしているんですよ」
「お前の始祖ヴァンパイア、ニキシオンだったか?大したことないんだな。お前みたいな手下しか居なくて、それもこっそり成り変わっただけ?は!吸血鬼ってそんなものなんだ」
『シミ、衛兵になって尋問スキルとして煽り方を学んだのかしら……』
「何ですって!ニキシオン様は偉大だわ!私はフスハレの人間達の動きを知るために忍び込むことしかできなかったけれど、ニキシオン様たちは山脈に魔物を溢れさせる力をお持ちだわ!」
「はぁ?お前を見ていると、その始祖がやったというのも疑わしいな。自然に増えたのを自分の手柄と言っているだけじゃないのか?どうやって増やしたとか聞いているのか?」
「手段は聞いていないけれど……それでもニキシオン様がされたことに間違いは無いわ!」
シミリートはニキアスの方を振り向いて、これ以上の情報は持っていなさそうだと身振りをする。
その横で、我慢していたらしいゾフィが合間のできたのを見てモラクを責める。
「あんた!見すぼらしい姿って言ったわよね!私が見繕ったローブ、一見は黒色に見えるけれど濃紺でデザインも入っているオシャレなのよ!けばけばしい派手な物しか認められないセンスのない奴に言われたくないわよ!」
「は、そんなのは言い訳よ!万人に認められない独りよがりは美とは言わないわよ!」
「相手の実力も見極め損なうような、生地の質もわからない審美眼の奴が何を言うの!」