ルオルゾン領主館
「そのくらいにしておいて貰えるかな」
「は、失礼しました。バーデ閣下」
フェルバーたち魔術師団を馬鹿にしていたのは、騎士団の中隊長で男爵でもあるフリドルフ・ワイスブロット大尉と、その副官で騎士爵でもあるクレーメンス・ザットラー少尉。その騎士団員をたしなめたのは、ルオルゾン領主であるルーペルト・バーデ・フォン・ルオルゾン伯爵である。
「到着が遅くなり申し訳ありません。魔術師団の中隊を預かっておりますオテロ・フェルバーでございます。配下14名の団員を連れて到着いたしました」
「ん?報告ではもう少し多いと聞いたのだが?」
「失礼いたしました。トリアン出身の銀級冒険者2名を含めた7名を、道案内含めた護衛として同行させております」
「ピザリア神聖王国の侵略に対して活躍したフェルバー大尉の子飼い冒険者ということか」
「は……」
「ふん、冒険者風情に頼るとは情けない……」
伯爵には聞こえないように呟いているつもりのワイスブロットだが、伯爵やその周りにも聞こえたようで眉をひそめられていることに気づいていない。
王領の南部で真モシノム大公国側との戦争は続いているため、ストローデ領への対応に東征できるのは、ピザリア神聖王国を撃退した部隊が基本になってしまう。つまり今回の騎士団員たちには、フィノイス周辺でユリアンネ達と相対していた者たちも含まれており、彼らからの情報はこの中隊長達も認識しているのである。一部には治療行為に対して感謝していた分隊長も居たのだが、その声は消されているのであろう。
ただでさえ日頃から人数が少ない魔術師団を馬鹿にしている騎士団員なのに、神聖王国の撃退の手柄を魔術師団に多く取られたと思っており、その中心であったフェルバーが自分と同格に陞爵、昇格したことにも不満なのである。