ステフェン周辺の村強化2
ステフェンの冒険者達による、フィノイス周辺の村の偵察結果が返って来るまでは、ステフェン周辺の村の防御力向上に努めるはずであったユリアンネたち。
しかし、ステフェンにまだ近い方の村の偵察は当然に早く終わるため、その村へ敵兵が来ていないことがわかると、防御力向上の対象は、少しでも北側、敵のビザリア神聖王国軍の侵略の可能性が高い方に切り替えられた。
「え?作業中に敵軍が攻めてくる可能性もあるってことじゃないの?」
「あぁ、そのために昨日までよりも護衛の兵士が追加される。王都からも追加の援軍が到着してきているからな」
しかも、魔術師団員とは2日ほど一緒に作業をした後は、完全に独立して作業するように指示されていた。
「やり方がわかったので、手分けする方が効率が良いというのが表向きの理由ですが、実際のところ、彼らもユリアンネさんと比較されるのが嫌らしいのです……」
副官のニキアスがこっそりと事情を教えてくれる。
「まぁ、魔力回復ポーションをふんだんに使っている人と比較されるのは、魔力量が劣っていると思われるようで嫌だよなぁ」
「かといって、まだ戦が始まっていないのにポーションを無制限に配るのも良くないわよね」
結果として、ステフェンよりフィノイスに近い村の防御力向上には、“選ばれた盟友”の6人以外には、ステフェンの守備隊の兵士が5人に増員されただけにとどまっている。
「話には聞いていましたが、やはり魔法使いの方ってすごいのですね」
「この村の出身の同僚もいます。村人たちに怪我が出ないよう頑張ってください!」
「銀級冒険者とのこと、戦時には曹長と同格扱いになるのですから、どうぞ我々にご遠慮なく指示してください。道案内以外にも働きますので」
村人たちから感謝されるだけでなく、兵士たちからも冒険者風情と侮られることなく好意的な対応であるのはありがたいが、面映ゆいユリアンネは、ますますローブのフード部分を深く下げ、口まわりを隠すマスクまで手放せなくなった。