真モシノム大公国への迎撃
「あら、参加をされなかったのですね」
「やっぱりクロリスさんはご存知だったのですね」
魔術師団員への勧誘を断った後、クロリスに納品に訪れた時の会話である。
「えぇ、商売柄いろいろと情報が入って来ますので、そろそろかなと。それで、ユリさんたちが出陣されるとしてもご準備にご協力できることは、と思っていたのですが」
「お気遣いありがとうございました。でも、無駄にしてしまったようで申し訳ありません」
「良いのですよ、魔術師団員になることを名誉と思う人とそうでない人もいますし、戦争に対して思うところがある方もいますから」
それからしばらくして、王都から南に向けて出発する軍隊の壮行パレードが行われる。屋台が出るとヨルクたちが誘うこともあり見に行くと、先日の魔物間引きのときのパレードよりも多くの騎士団員や魔術師団員、そして今度は冒険者達もパレードの主役として行進していた。
「シミは参加しても良かったのに。手柄を狙う機会でもあったでしょう?」
「いや、俺はユリ達と一緒がいいよ。行かないなら行かない、行くなら一緒に行くから」
「そうだな、ユリが希望しないなら、俺たちもここで生産活動を続けるよ」
「冒険者が減ったなら、それだけ依頼も増えるかもしれないぞ。いい仕事がまわってくると良いな」
ユリアンネが責任を感じないように皆が気を使ってくれることもわかる。
「じゃあ、あの串焼きは私が奢るわよ!」
「やったー」
それからは特に、南方の真モシノム大公国との戦争のことばかりが街中でも話題になることなく、地下水路や他の依頼などをこなしつつ生産活動という平和な日常を過ごすことができていたユリアンネたち。
しかし、半月もしないうちにシミリートが再び冒険者ギルドで呼び出しを受ける。