イニヒェン村のオーク退治2
ユリアンネが魔法を多発している横で、シミリートも彼女から借用している麻痺と吸血のダガーをそれぞれ遠くのオークに投擲した上で、身近なオークに対して槍を突き出していく。短剣投擲の初級武技≪穿孔≫も習得しているので、その特殊効果だけでなくダメージもしっかり与えている。
何体かのオークを倒して少し落ち着くと、
「皆さん、こちらへお願いします!」
と村長の声が聞こえてくる。
自分の家に閉じこもるのではなく、ある程度逃げる余裕があった者たちは、村長の家に逃げ込んでいたようである。確かに他の民家に比べて土塀があるだけ防御しやすいと思ったのであろう。
遅れていたヨルクたちも追いついて来た後は、残るオークを順番に殲滅していくだけの作業である。
家々が影になり全体が見渡しにくい点はあったが、1体1体オークを減らしていき、村人たちからも助けを求める声が聞こえなくなった辺りで、村長が状況把握を始める。
シミリートはここでもオークの死体を数えながら魔法の袋に回収していくと、合計で8体であった。先に倒してきた数に比べると少ないが、戦闘力が低い村人たちにとっては脅威だったはずである。
「怪我人は出ましたが、死者はおりません。皆様のおかげです。本当にありがとうございます」
村長が一息ついているエカードに話しかける。
「怪我人の程度はどんな感じだ?昨日の2人ぐらい軽傷ではないのだろう?」
「お分かりでしたよね。はい、大怪我ではありますが、命に別状はありません」
ユリアンネが軽く頷くのを確認した上で、シミリートが彼女から預かっていたポーションを差し出す。
「よろしいのでしょうか!助かります。治るまで働き手の数が減るところでした」