イニヒェンの村2
留守番で村の防衛を任されたユリアンネたち。
元々この村は森の中にあり獣達からの防衛のため、ほぼ円形である村の敷地は、木を格子状に組んだ柵と、その外側に軽く掘った空堀で守られており、出入りは1箇所だけの門になっていた。
しかし、オークの体格と力があれば、門以外の場所からでも入ってくることができそうな程度の作りである。
「いくら村とは言っても、これだけの敷地の外周を6人だけで手分けして見張ることはできないな」
「村人達もできるだけ普段の生活をするようで、あちこちに居るから、真ん中の広場に集まっておいて貰うこともできないわよね」
「いつオークが襲撃してくるかわからないのに、それを続けると皆も疲弊するからな」
「じゃあ、襲撃があったときに駆け付けやすいようにユリ達は広場で待機しておいてくれ。俺とジモは分散して、死角になりそうなところを重点に巡回することにしよう」
その前に、とオークに襲われた怪我人2人のところに立ち寄ったシミリートは、ポーションを提示する。
「傷回復薬をかけるから包帯を外して貰えますか?」
「いえ、そんなお金は払えませんから……」
「あなた方に払って貰おうとは思いませんから、お気になさらずに」
強引に包帯をめくったが、その途中でも普通に怪我した腕を動かしていたし、実際に怪我はそれほどの大怪我ではなく、初級の回復手段で大丈夫な程度であった。シミリートはそのことには特に触れずに、それぞれにポーションをかけて傷を治していく。
「もしオーク達が姿を現したときには、女性子供達を守るのに手を貸してくださいね」
「あぁ、もちろんだ!」
それ以上は何も言わず、見張りに向かうシミリート。
怪我人だった男性2人は言葉を発さずに顔を見合わせた後、どこかに向かう。