魔物退治依頼3
「今から行くイニヒェンの村は、王都の周りに点在する村の1つでな。王領は草原がほとんどだが、たまにある森の中に村があるんだ。だから、草原の中の村と違ってオークの集団が近くに居着いたのかもな」
冒険者クラン“灼熱の冒険団”に属する6人のリーダーであるエカードは、先輩風を吹かせてくるが、面倒見は良い男のつもりなのか、馬車の中でも何かと話しかけてくる。
御者台にはできるだけ人との接触を避けたいユリアンネと、いざとなればすぐに遠隔攻撃として矢を放てるゾフィの2人が乗り込み、残りの10人が荷台に乗っている。
そのため、たくさん話しかけてくるエカードの相手をするのは自然とシミリートの役割になっている。一応カミラとジーモントも対応しているが、ヨルクはほぼ相手にしていない。
エカードの方の仲間達も、彼の行動がいつも通りなのか気にせずに仲間内だけでの会話が多い。
「もし今回でいい働きをするようならば、クランの上役にお前たちのことを紹介してやっても良いぞ。かといって、頑張りすぎて無謀なことはするなよ、ガハハ」
「はぁ、まだクランとかはイメージが出来ていないのですが、今回は頑張らせて頂きます」
「まぁ所詮はオークだからな。俺達がやりすぎて、お前たちの活躍タイミングはないかもな」
「その場合は村人を守るなど、後方支援を頑張りますね」
「お前、なかなか見どころがあるな。期待しているぞ」
「よろしくお願いします」
もうすぐ村に到着する見込みという手前で、念のために昼休憩をとる。
いつもならばかまどを作って暖かい昼食にするものだったが、そのすぐ先にオークたちの集団が居る可能性もあり、村側で何があるかもわからないため、パンと干し肉などをかじるだけになる。
「分かっているよ、我慢しているだろう」
ヨルクがゾフィたちの視線に対して答えている。