軽病治療と簡易結界
それぞれが生産活動を続けている間に、ユリアンネは魔導書の写本でさらに新たな魔法も習得している。≪軽病治療≫と≪簡易結界≫である。
前者は回復魔法の一種であり、中級魔法となる。名前の通り軽い病を治癒するものである。
ユリアンネは前世で薬学部を目指していた学生であり、高校レベルの生物学までは学んでいたため、この魔法の習得の際には、それらも活用する。
具体的には、病気の原因には細菌やウィルスなど色々があるが、それらを駆除することと、血液中の白血球を活性化させて痛んだ部位の復旧を考えてイメージする。
今までの魔法に比べて実際に効果が出たか確認するのが難しいものではあるが、風邪気味になった仲間たちに使うつもりである。
もう一つの≪簡易結界≫は初級の空間魔法である。
将来的にはこの系統の上位には色々なものが期待できるが、まずは初級であり、目の前に小さな隔離された空間を作成するものであった。
薬の調合が用途例と魔導書にも書いてあるように、不純物の混入を回避するには便利と思われる。
化学実験での丸フラスコをイメージし、持ち手でもある出し入れ口の長い首すらもない、単に丸い球体で中が空洞のガラスを意識する。
それっぽい物ができた気がしたので、その中に≪水生成≫で水を発生させてみても漏れることなく空中に水が球体で浮かんでいる現象を確認できた。
後はその中に砕いた薬草の粉を入れ攪拌し、魔力をこめることでポーションが完成する。
上手く乾燥させることや砕くことなども魔法できるのであれば、全ての工程をこの≪簡易結界≫で行うことでさらに品質が高いポーションを調合できるのではないかと期待できる。