火魔法の魔導書
幼なじみが来てくれた日のうちに、ゾフィのお店に羊皮紙を買いに行く。
火魔法の魔導書と交換した写本をもう一度制作するためと、火魔法の魔導書の写本も作るためである。
最近“オトマン書肆”で写本の勉強もしている際に提供されていた上質な羊皮紙は、最初に作った写本の時の羊皮紙に比べてかなり薄い。同質の羊皮紙を求めようとすると、この下町の皮革屋では需要が少ないようで、在庫をあるだけ購入することになった。
それだけ購入費用もかかったが、書店で貰っているお金で賄うことができた。
家に戻り、まずは水魔法の写本に取り掛かるが一度作ったことがあるのと、写字生の訓練を開始したこともあってか、かなり簡単に終了した。
「お父さん、この水魔法の魔導書はどう入手したの?どうやって水生成を習得したの?」
「おや、ユリには言ってなかったかな。アマにだけだったかな。すまん、すまん。これはな、元々はお母さんの物だよ。ルイーサはもう亡くなった親から引き継いだと言っていたよ。俺はルイーサに付きっきりでこの水魔法を教わったんだ。だからこの前のロルトさんと同じく、魔術語や魔法陣をちゃんと勉強したわけではなく、ルイーサの唱える言葉を耳で覚える方が先でな」
「そうだったのね」
「あぁ、だからお前たちにも感覚的なものしか教えてやれず、すまないな。それより、そのロルトさんからの火魔法の魔導書はユリの物だから写本を持たなくても良いぞ」
「そういうわけには。水魔法と火魔法、それぞれ写本を私の物にするわね。万が一の時にはその原本を売ってね。私は写本を作れるし、それを売れるから」
「そうか、すまないな」
ラルフも、ロルトから入手した魔導書を見ながら火魔法に挑戦してみているが、なかなか習得できないようである。ロルトと同じく、耳で覚えたのが先で、水属性とは異なる火属性の魔術語が正しく理解できていないからであろうか。