王都での露店挑戦2
何回か神殿の露店に皆で出品した結果、良く売れたのはユリアンネの≪火球≫≪治癒≫スクロールとヨルクのナイフやダガーであった。
冒険者も掘り出し物を探しに来たのであろうが、商人のような風体の者たちもお買い得な値段のものを漁りに来たようで複数をまとめて購入して行っていた。どこかで転売するのかもしれない。
元々スクロールは冒険者の万が一の攻撃もしくは回復手段として、ナイフやダガーもある意味で消耗品としてでもあるが万が一の投擲などの予備武器として冒険者が購入すると想定していたものである。
「まさかそんなにナイフやダガーが売れるとはね。しかも、仕入れ原価より結構高く、でしょ」
「あぁ、これが続くなら家賃の心配は無いな。カミラもそこそこ売れただろう?」
「そうね、ヨルクみたいに完売では無いけれどね。そういう意味ではゾフィも、よね?」
「まぁね。最低限は売れたけれど、衣服は嵩張るから、売れ残りが多く感じちゃうわね」
「ジーモントの串肉も人気だっただろう?」
「あぁ、色々と味付けや調理方法を変えたのを試しているのだが、人気店が売り切れた後に流れてきた客もいるし、まだまだだな」
それなりに手応えがあった4人に比べて、実は落ち込んでいたのはユリアンネである。
「ユリ、スクロールは完売続きだから良いじゃないか」
「そうなんだけど……」
子供向けにも用意した薬が売れていないのである。他の商品に比べて品質が見た目で分かりにくいのと、実店舗と違いクレームもつけにくい薬を子供のために買う親が少ないだけでなく、そもそものこの市場に来る客層と合わないのかもしれない。
冒険者向けの薬ならば、たくさん買ってたくさん消費するのと自己責任の感覚だが、子供向けの薬は自宅に置いておいていつ使うか分からないのに、万が一変な副作用が出たり効かなかったりしても困るのであろう。
「やっぱりこういうのは、実店舗でないと信用が無いのかな……」
金稼ぎだけであれば、主流の傷回復や魔力回復のポーション、そして写本の納品をクロリスに行えば良いのだが、薬師になりたかったユリアンネとしては微妙なところであった。