黒いダガー2
「あら、まだ何かご相談が残っている感じですね」
ユリアンネはクロリスへの相談の1つ目、スクロールのことについて話が終わったところで、ある意味今日の本題である黒い刀身のダガーについてどのように話すか考えていたら、クロリスから指摘される。
「あの市場で買ったダガーのことだろう?」
相変わらずのシミリートが横から言ってしまう。
「もう……。はい、こちらですが、私の≪簡易鑑定≫では詳細が分からず。このように刀身が黒いので余計に何か問題があるのでは無いかと不安になりまして」
話の途中で少しだけ刀身を抜いて見せる。
「黒い刀身とは確かに珍しいですね。これはちょっと私でも分かりかねますね」
クロリスは鑑定能力が高いと言っても、魔法の鑑定ではなく自身で経験した物を目利きできるだけであり、魔法の効果までは、とのこと。先ほど魔導書の在庫を確認して来てくれた店員に、再び何か指示を出している。その店員が今度は早く戻って来てテーブルに置いたのはスクロールであった。
「ユリさん、こちらをお買い上げ頂けますか?中級魔法のスクロールですのでお安くはありませんが、本日のポーション納品の代金から差し引くということで」
「え?」
広げて見せてくれたのは、自身で修得済みの≪簡易鑑定≫に似ている魔法陣であり、おそらく≪鑑定≫魔法のスクロールであると思われる。
「はい、ぜひ」
せっかくなのでしっかり魔法陣を確認した上で、いつか修得するときの参考になるようにユリアンネが発動させて貰う。
≪簡易鑑定≫のときのように、元々知っていたかのように自然と頭に浮かぶ感じで、中級中位品と勝手にわかるだけでなく、素材の材質や大雑把な製法もわかる。そして今までは特殊効果があるとしか分からなかったのに、魔法の付与効果の内容まで頭に浮かんで来た。
「これは」