黒いダガー
黒い刀身のダガーについて、鑑定を誰かに依頼したいのだが、もし良くない物だったときに面倒に巻き込まれるのが心配なユリアンネ。
そのため、目の前に魔道具の店舗があるのに相談に行けない。
迷った最後に、結局はクロリスのところに訪問する。納品用のポーション、写本を持って第2区画のクロリス商会に訪れる。1人では何かあったときに危ないと言われ、シミリートがついて来ている。
「あらユリさん、今日もたくさんの納品をありがとうございます」
「しばらくは旅に出ないのですか?」
「そうですね。前回が魔物の発生で困ったことになってしまったのと、後進の育成のためというのと、まぁ色々とありまして」
大きな商会の会頭なので色々と事情もあるのだろうと理解する。それに自分たちにとっては、クロリス本人が居る方が話が早いのでありがたい。
「今日はそれだけでは無いようですね」
「はい、ご相談がありまして。まずはこちらです」
「あら、スクロールの制作もできるのですね。まぁあれだけ魔導書を正確に写本できるのであれば当然ですね。でも、初級魔法まで、ということですかね」
「流石ですね。はい、中級魔法のスクロールがどうしても上手くできないのです」
「それは。なるほど。ユリさんの鑑定魔法は、初級≪簡易鑑定≫まででしたね。ぜひ中級≪鑑定≫の修得を目指して下さい。私が言えるのはそこまでです」
そこで一旦話を切って、店員に魔導書の在庫の確認を指示してくれている。
「お待たせしました。ちなみに、この素材の羊皮紙、それなりに良くできていますが、もとの魔物が低ランクですね。残念ですが、もっと薄い素材ですと買取させて頂きたいところですが」
ユリアンネとしては、例えばクロリス商会から羊皮紙を調達して売り物のスクロールを制作することまでは考えていない。今のようにゾフィが用意してくれる限りは、彼女から羊皮紙を調達することを考える。