王都での生産生活2
ゾフィ以外に、トリアンに帰っても実家を継ぐ予定ではないドワーフ鍛冶屋の次男ヨルク。
「ヨルクは、王都にも親戚が居て鍛冶設備が借りられるから良いわよね。街で買い集めたクズ鉄や壊れた剣などを材料にナイフやダガーを作って練習しているんでしょ?」
「あぁ、そうなんだけどなぁ……トリアンに居た時には、自分たちでダンジョンから鉄鉱石を掘り出せただろう?だから、鉄鉱石からインゴットにする練習も出来た。だけど、王都で鉄鉱石を入手するのは人から買うことになって、コストがかかりすぎるんだよな」
「鍛冶は鍛冶じゃないの?」
「鍛冶ってのは大きく2つあるんだよ。鉄鉱石などを使いやすい鉄インゴットなどにする製鉄である大鍛冶。それと、鉄インゴットなどから武器をつくる小鍛冶」
「つまり、大鍛冶の練習ができず、材料を入手しやすい小鍛冶だけしているってこと?」
「あぁ、親戚のところには両方の設備があるのにな」
「仕方ないわね」
「それと、カミラたちもそうだろうけど、売り先がなぁ……」
元の素材の質にも依存するが、ヨルクが製作できる武器は中級上位にまでなっており、いくつか作り出した小型の武器、主にはナイフやダガーの販売手段に悩んでいる。斜め向かいの武器屋に納品する選択肢ももちろんあるが、今後にライバル店になる可能性もあると考えると難しい。
「そうなのよね、私も狼の牙などから細工品を作って、一つ一つの工程の再訓練はしているけれど、売り先が無いのよね……」
トリアンで実家の工芸屋を継ぐ予定の長女であるカミラも、王都での生活費の稼ぎ方を考えるにあたり売り先に困っている。
一方、シミリートは、トリアンに帰ると衛兵に就職済みで生活に困らない。しかし王都では槍の道場に通い騎士団員達と試合稽古することで腕を上げているが、金銭を稼げているわけではない。
ジーモントはトリアンの宿屋を継ぐ予定であり、料理の修行として、王都に多くある食堂を巡り新しい料理に触れたり違う味を経験したりしている。市場にも行って、トリアンでは縁の少なかった食材について調理方法などを店員に確認し、場合によっては購入して試行錯誤したものを皆の食事に提供している。