新居の挨拶まわり
内覧をしたのは“選ばれた盟友”の6人だけである。宿で夕方に合流したシャドウとフェザーの兄妹にも新居の話をする。
「部屋数もちゃんと多いから、シャドウ達もおいでよ」
「いや、用事があるから皆に迷惑をかけないためにも宿屋暮らしの方が……」
「その用事をするにも貯金を使い果たさないように、節約はした方がいいのでは?」
「う」
「皆様に甘えさせていただきます。どうぞよろしくお願いします」
結局フェザーの方が現実を見ているのか、兄妹は宿屋と同額程度の費用負担で食事付きという条件で同居することになった。
今夜はこの宿の最後ということで宿屋の主人にも挨拶をすると、いつもより少しだけ豪勢な食事を出して貰えることになった。
「じゃあ今夜からはここに帰ってくるんだよ」
翌朝、シャドウとフェザーに新居を案内した後は、掃除道具を調達しての掃除担当、隣近所への挨拶土産や直近の食材や生活用品の調達担当、そして不動産屋を紹介してくれたクロリスへの御礼と住所の連絡担当に分かれる。
クロリスのところへは、名刺メダルを貰った2人でもあるシミリートとユリアンネが向かう。
「なるほど、あの辺りになったのですね。ライマール書店の近くね」
「え!?ライマールさんをご存知ですか?」
「あらユリさんも?」
「はい、私の師匠の紹介で」
「師匠って薬師の?」
迷宮都市トリアンでは書店に後継者として弟子入りしていること、そして魔導書の写本も行えることまでクロリスに話すことになった。その流れで魔法の収納袋にあるいくつかの写本も見せる流れに。
「ユリさん、色々と訳ありだとは思っていましたが、この注釈の別冊も……軽々に薬師や写本の能力を他人に見せないことは正しい判断だと思いますわ。納品は信頼できる人だけになさった方が良いわね」
「つまり、薬だけでなく写本もクロリスさんが買い取ってくださるということですね」