猛々しき炎熱
「これでロルトの魔法の幅が広がると俺たちも銅級を目指せるかな?」
「いや、新しく覚えてもロルトだけだろう?俺やオイゲンに関係ないじゃないか」
「皆さん今は鉄級なのですか?」
オイゲンとヒルツの会話にアマルダが割り込む。
「アマ、銅級はベテランの証。その級で一生を終える冒険者も多いぐらいだ。オイゲンさんたちはまだ20歳ぐらいだから、まだまだこれから伸び盛りだよ」
「俺たち、村を出たのが成人してからだから。なかなか親が許してくれなくて。ロルトが火魔法を習得したのがきっかけだな」
「同郷の幼なじみだったのですね」
「そう、だからさっきの魔力操作が分からないのはこの2人も」
「そうなんだよ。一人前になるには武技っていう武器ごとの技が使えるようにならないと難しいのだけど、それが魔力操作だっていう人がいて」
「ただ、教えてくれる人も、気合いだ、身体の中で燃え上がるものを武器に込めるんだ、など色んなことを言われて……」
「なんか抽象的ですね」
「まだまだ鉄級の依頼では報酬も少なくて、装備の買い換えどころか日々の生活にも不安が。でもラルフさんが俺たちを買ってくれていて、こうやって指名で依頼をくれるのは助かっています」
「良い加減な性格の冒険者も多い中で、“猛々しき炎熱”の皆さんはパーティー名の印象と違って真面目で誠実なので、安心できるのですよ。娘達とこうやって一緒に行動していても」
「パーティー名は、村を出たときの勢いでつけたので。ただ、ラルフさん達にもせっかく覚えて頂いたのに今更変更するのも、と」
ラルフの採取指導だけでなく、火魔法の魔導書の入手や関係する会話などもあった夜、無事にダンジョンから帰って来て、ユリアンネはふと考える。
幼なじみ。前世の記憶を取り戻す前に、この世界で生きて来た記憶もある。崖から落ちた怪我や記憶を取り戻した混乱もあって、少しの間は会話も減ったが、ラルフの店舗兼住居である“木漏れ日の雫亭”の近所の同世代の子供たちの顔を思い出す。