王都シャトニーでの住居探し
「ゾフィの言う通りだった」
シミリートがゾフィに頭を下げている。シャドウも横にいて無言だが同じ雰囲気である。
「ね、毎日宿に相部屋で泊まって1人が毎月銀貨30枚、食事も外食で別に必要ならば、自炊もできる借家の方が良いわよね。それに例えばユリなら調合や写本もしたいだろうし、私も毛皮の作業もしたいけれど、相部屋では出来ないわよね」
「そうだな、銀貨1枚を6人や8人が毎日払えば、月に金貨2枚になるよな」
冒険者ギルドでは斡旋情報の概要しか分からないのだが、6人や8人がそれぞれ個室は無理でも、男女ごとに寝室が分かれつつ食堂や作業部屋にできそうな部屋などもあり馬小屋があるものが金貨3枚程度でありそうである。
いくつかあたりをつけてみて、そのうちの複数を取り扱っているという不動産屋を紹介して貰う。
流石に冒険者ギルドが紹介する不動産屋は悪徳商人ではないようで、安くてもスラム街に近すぎるところは除外し、何件かの情報をリストアップしてくれる。
ユリアンネは前世記憶の不動産屋で間取り図付きのチラシを思い出すが、この世界では間取り図という文化はないのか、文字ばかりの情報であった。
「こちらは冒険者パーティーが拠点にしていた物ですね。男性ばかりでして外食が主だったようなので台所は傷んでいなく綺麗ですよ。こちらは商売を引退した老夫婦が住んでいた物で、部屋数はそれほどありませんが治安の良いところにありますよ。こちらは……」
色々と口頭で話を聞かせて貰っても、王都自体に慣れていない上に、家探しに経験がないので比較要素も分からない若い仲間達。
「では実際にご覧になりますか?」
と3候補を見せて貰ったが、決定するほどに判断ができなかった。