王領
キッツシェ湖のあったローニョレ領も無事に通り過ぎていよいよ王領に入ることができた一行。
「ようやく王都シャトニーが近づいたな。これでずっと右手、北側にあった魔の森、セルヴ大森林も終わるな」
商会専属の先輩冒険者であるウィンデルも少し安心しているようである。途中のメイユ付近以外ではそれほど魔物の脅威もなかったのであるが、やはり魔の森の存在だけでも気を張る原因であったと思われる。
そして王領に入ってからは草原が広がり、街道から見える景色も農業をしていないところでは角兎ホーンラビットが見られる景色となった。
シャドウが従えている鷹、フィアが兎を狩るようになり、食事に提供されることも増え、ヨルクが喜んでいる。
王領に入ってから3つ目の都市が王都であり、それまでの2つの街もそれなりに栄えていたのだが、やはり王都は規模が違っていた。
草原の中の街道であり遠くが見渡せるため、かなり離れたところからでも王都の大きさを見ることが出来た。王都の手前で魔の森も途切れ、その先は草原が広がっている。草原の中にある街なので小さく見えるはずなのに、大きいことがわかる。街道から王都の城壁が見えたとき、シミリートたちははじめて見る大きさに驚く。
「流石は王都ね。今まで通ってきたどの街よりもトリアンの方が立派と思えていたけれど、王都の大きさはトリアン以上ね」
「そうだな。まぁトリアンの城壁は真ん中のダンジョン近くが一番しっかりしているから、外壁を見比べても意味がないけれど、都市の大きさからしてすごいな」
「シミは見るところが違うのかもしれないが、素直にこの巨大さには驚くよな」
仲間達がはじめての大きな都市に驚いているが、ユリアンネは前世記憶もあり、内心では人口規模には驚いていない。ただ、日本では街を囲う城壁というものに慣れがないため、その規模や城門の大きさには素直に驚いている。