バーアンのデメテル神殿2
ローニョレ領都バーアンの南端で、キッツシュ湖に迫り出した神殿に来ているユリアンネたち。
「じゃあ、お参りもして行こうか」
観光を先にしてしまったが、この神殿に祀られている豊穣の女神デメテルへの拝殿に向かう。その途中にある部屋の中が見えた。
「え!?魔法陣?」
ユリアンネが興味を持って見ると自身も習得済みの≪治癒≫の魔法陣に似ている。
「あら、どなたかお怪我を?」
部屋の中にいた女性神官が声をかけてくる。
「いえ、床に魔法陣が描かれていたことが気になりまして。すみません」
「大丈夫ですよ。ご覧になるのは初めてでしたか。デメテル様は豊穣だけでなく治癒、回復についても司られていますので、怪我の治療に来られる方が多いのですよ。それで、我々個人では治せないような大怪我の方のための魔法陣になります」
「儀式魔法……」
「よくご存知ですね。そうですね、ここでは複数の神官がデメテル様に祈りを捧げてお怪我を治して貰うための場所ですよ」
書籍では儀式魔法、複数人が魔力提供することで大きな魔法を発動できるものを知ってはいたが、実物を見るのがはじめてであったユリアンネは興味津々であった。しかし、
「ほらユリ、邪魔しちゃダメよ。早く行くわよ」
とカミラに引っ張られて先に進む。
大きな部屋の奥に巨大な女神像がある部屋にたどり着く。前世記憶の教会のような椅子が後ろに並ぶことはなく、どちらかというと体育館のような広い場所の前、舞台のところに女神像があるような感じである。
「このローニョレ領はキッツシュ湖に代表されるように水が豊かで農業が盛んですが、これらは豊穣の女神デメテル様のご加護のおかげです」
お賽銭を納めた後、神官の説明を聞きながら巨像にお祈りをする。