バーアンのデメテル神殿
ローニョレ領都バーアン手前の川に、かなり凶暴な魚が生息することを見たユリアンネたち。ユリアンネは前世記憶のピラニアが、飛魚みたいに翼になるヒレを持ったかのように感じた。
「ははは。あんなのがたくさんいる川を泳いで渡る奴はいないだろう?」
「……はい、わかりました。でも逆にどうやってこの橋を作ったんですかね。すごいですね」
「まぁあいつらが飛んで来られない距離から土魔法で橋桁などを作っていったんだろうな」
「だから通行料も要る橋なんですね」
一行はその橋を渡りきり、領都バーアンに入る。まだ午前中であり自由時間も多い。
「南端の神殿は一度見ておいた方が良いぞ」
先輩の言葉も貰っていたので、ユリアンネたちはいつものように実家関係の店舗視察もしながら街の南に向かう。
「何あれ、すごく綺麗!」
カミラが声を漏らすように、街の南端にあった神殿は一部が湖に迫り出し、いくつかの建物は水上に、そしてそれらが渡り廊下で繋がれていて、確かに綺麗である。またそれらの建物はほぼ白色で作られており、水面からの反射もあり光り輝いていた。
また、その湖も南方の対岸が見えないどころか左右、つまり東西方面も見渡す限り水面が続き、波が穏やかな海としか思えないほどの巨大な湖であった。
「せっかくだからあの渡り廊下も歩いてみようよ」
「でもあの魔物の魚が……」
その会話が聞こえたのか通りすがりの神官の方が教えてくれる。
「あの川の魚は湖まで来ないので大丈夫ですよ」
すぐにお礼を伝えて皆で湖に迫り出した場所まで進む。
「これは確かに一度は見ておいた方が良い場所だな」
誰もが絶景を楽しむ。