ローニョレ領
ダンジョン探索の翌日に予定通りに、王都シャトニーに向けてルードルフの街から西に出発した一行。
荒野続きの街道を西に進むと、特に境目は分からなかったが、ルオルゾン領からローニョレ領に入ったらしい。
「このローニョレ領と言えばキッツシュ湖だぞ。見るのを楽しみにしておけよ」
と事前に、先輩冒険者のウィンデルたちに聞いていた。知らない者が見ると海に見えるほど巨大な湖とのこと。
ある程度進むと周りは荒野から平原にかわり、農作物がたくさん作られているのが街道からも見える。
「このローニョレ領は、ルオルゾン領に比べて農業などが盛んなのですよ。豊富な水のおかげですね」
いつものようにクロリスが教えてくれていた。
ローニョレ領の北部を東西に突き抜ける主街道。その主街道のなかで、ローニョレ領の東西の幅のちょうど真ん中あたりに領都バーアンがある。そのバーアンの手前、東側に大きな川が魔の森から南のキッツシュ湖へ流れているのに突きあたる。
「すごく大きな橋ですね」
「あぁ、泳いで渡れないからな」
「え?どうしてですか?そんな急流でもないですし、見た目より深くて危ないのですか?」
橋の手前でいったん立ち止まり関所のようなところで通行料を支払っている待ち時間で、先輩冒険者でも頭脳担当のアントニウスが答えてくれる。
「そうだな、後でな」
通行許可が出て橋の中ほどまで進んだところで、後続がしばらく無いこと確認して、一行は立ち止まる。
元々話をしていたシミリート以外のメンバも欄干から川へ覗き込む。それを見たアントニウスが干し肉を取り出して川に弧を描くように投げ込む。水面に着く前に、水中から何匹もの魚が飛び出して奪い合うのを見た皆は言葉を失う。
「……」