魔法使い3
次のゴブリン処理のときに、ユリアンネは水魔法魔導書の写本をロルトに見せる。
「これは、もしかしてラルフさんの水魔法の?拝見しても?」
既にラルフに許可はユリアンネが貰ってあったのだが、ロルトはラルフが頷くのを確認してから羊皮紙をめくる。
「うーん、やはり属性が違うと魔術語も違うようだな。こうかな?」
ロルトは写本を見ながら、杖を前に突き出してぶつぶつとつぶやくが青色の魔法陣は浮かび上がらないし、水も生成されない。何度か試してみるが、それでも上手くいかない。
「ダメだ。俺に水属性の適性が無いのか、魔術語の解釈が違うのか、練習が足らないだけなのか……」
魔法の属性は一般には火風水土光闇と無属性と言われている。無を除いた6属性は、暦の曜日にも対応している。つまり1週間は6日で、1月は30日なので5週間。1年は360日。毎月30日から1日に月が変わる夜が満月になる。
その魔法の属性、向き不向きの適性があるとも言われているが、ユリアンネは魔法自体と同じく知識を得る機会がないだけであることも疑っている。だからこそ、ロルトが水属性を習得するのを見てみたい。
落ち込んだ気配だったロルトが決意したようにラルフに顔を向ける。
「ラルフさん、この魔導書を譲って頂けないでしょうか?私のこの火魔法の魔導書と交換ではいかがでしょうか?」
「いや、それはユリの写本だから……」
「なおさら申し訳ないのですが、どうかお願いします」
ユリアンネが写本を作ったという意味ではなく、彼女用の写本と勘違いしたようである。
「製本された物と雑な写本では釣り合わないと思うのですが」
「いえ、もう読まなくても使えるまで来た魔法の魔導書なので大丈夫です。ぜひ」
「ロルトが水生成できるようになると我々も冒険がしやすくなります。お願いします」
オイゲンとヒンツにも頭を下げられたラルフは、ユリアンネが頷くのを見て了承する。
「本当に良いのですね?ならば、こちらをどうぞ」
ユリアンネが自作の旨を言い出さないのを見て、面倒ごとを回避するつもりだと解釈し、ラルフがロルトと魔導書の交換を行う。