巨大蜂の洞窟3
洞窟内はユリアンネの≪灯り≫魔法によって明るかったので気づいていなかったが、洞窟の外まで逃げてくるともう夕方、日も落ちるところであった。
「これは不味いな。もう乗合馬車には乗れないだろうし、野宿しかないな」
「流石に洞窟から少し離れたところで野営にしようぜ。夜に四方八方から蜂に追われると夢でうなされる!」
ヨルクが冗談か本気か分からない発言をするが、皆も同意する。
洞窟から少しは離れた、かまどを用意できる広さのある場所まで移動する。魔法の収納袋には念のために寝袋等も入れてあるので野営には困らないし、商会専属の冒険者リーダーのウィンデルからも一晩ぐらい泊まってきても良いとは言われていた。そのときには宿に戻るつもりだったのだが、仕方がない。
ジーモントの温かい料理で一息をついたところで、皆の口が滑らかになってくる。
「いや、やっぱり鎧が無いのは辛いな。鎧があれば防げたはずの怪我がたくさんあったな」
「そうだな。数も多かったし、俺たちにはちょっと背伸びしすぎだったのかもな」
「そうだけど、蜂蜜……」
「ねぇ、明日もう一度だけ挑戦してみない?もしかすると蜂蜜までたどり着けるかもしれないし」
「そうは言うが……分かったよ。馬車に間に合う時間には引き上げるからな」
シミリートは女性陣の無言の圧力に負けて再挑戦を決定してしまう。シャドウもフェザーの目が見られず頷いている。
初めての魔の森での野営ではあったが、入口に近い場所であるからかたまたまか魔物に襲われることもなく、無事に朝を迎えることができた。
火の始末をきちんと行なって再び洞窟に戻る一行。