セルヴ大森林
いくら自由時間とはいえ護衛依頼の途中であるので、商会専属の冒険者リーダーであるウィンデルには断ってから魔の森に向かう。
「そうだな。鎧がないから森の奥まで行かないのであれば、魔の森を一度見ておくのも良いだろう。ここから王都までずっと魔の森の南の街道を通るのだからな」
と許可されている。
魔の森とも言われるセルヴ大森林。メイユ付近のストローデ領からはじまり、そのまま西にルオルゾン領、ローニョレ領を通って王領まで東西にのびる大森林である。通常の森よりも魔物の発生が多く、魔素が集まりやすいからだと言われている。トリアンダンジョンほどの規模ではないが、あちこちにダンジョンがあるという話である。ただ、そもそも奥に行くほど魔物が強くなるため、全容は知られていない。
このルードルフの街も、セルヴ大森林側である北には城門が無く、東門から出発する。馬に乗って行っても自分たちが森に入っている間の馬の安全が保証されないこと、森で狩りなどを行う冒険者が多いことから乗合馬車が森の入り口まで出ていることから、8人はその乗合馬車に乗って北の森まで向かう。
「おや、旅の冒険者ですか?あまりお見かけしないお顔の方々ですが」
「お、わかるかい?そうなんだよ。何か注意点とかあるかい?」
御者が軽く話題を振ってくるのでシミリートが適当に合わせて情報収集を行う。
「そうですね、この森は奥に行くと強い魔物がたくさんらしいですが、経験が無いのであれば手前でEランクやDランクの魔物を相手にするのが良いですよ。慣れない場所での過信は身を滅ぼしますから」
「良いこと言うね。おすすめの魔物は何だい?狼や熊などなら肉も取れそうと期待しているが」
「確かにそうですが、虫の方が多いかもしれないですね。巨大蟻や巨大蜂に気をつけてくださいね。もし蜂の巣を見つけたら一攫千金ですよ」
「ほぉそれは気にかけておこう。ありがとう!」
馬車を降りる際に、チップとして多めの銅貨を渡しておく。




