魔法使い2
ユリアンネだけでなくアマルダまでロルトの横に座り込む。
「じゃあまずはどうやって習得したのか、からかな」
ロルトの魔法講義が始まる。
「たまたま同郷の先輩が火魔法の使い手で、酒を飲んだ際に賭けでこの魔導書を巻き上げたんだよ。後から考えたら、内容は習得済みで俺にくれるつもりでの賭けだったのかもね。売ったらそれなりの金になるはずなのに、あの時には俺の姉に惚れていると聞いていたし。
で、魔力操作について簡単には教わったよ。一緒に聞いていた村の誰も感覚がつかめず諦めていたんだけど、自分だけは何故か身体の中でモゾモゾする感覚があってね。先輩に聞くと多分それと言われて、それからは焚き火を見ながら、火をイメージして魔力を体から押し出す練習をひたすらしたよ。
呪文は魔術語の文字を覚えるというより、魔導書に書いてある文字と耳で聞いた音とセットにして、歌を覚えるようにしたよ。だから、魔術語の意味や魔法陣関係などはやっているうちにこんな感じなのかなと思えて来たぐらい。
その先輩もその後すぐに冒険中に死んでしまったし。
魔法発動体はその先輩が持っていた杖を形見に譲り受けただけで、触媒も使う方法があることを知ったのは後からだよ。だから火以外の属性の魔法が使えるかも試したことも無いんだよ。魔導書は高いからね。
魔力って何だろうね。体力みたいに使えば使うほど鍛えて増やせるみたいだし、休めば回復する。寝ると回復効率が上がるね。寝なくても、頭、神経を使わないリラックスしている時には回復量が増えるみたい。
俺の今の限界は、今回みたいな日に何回か程度の戦闘だと、1つの戦闘であの火魔法を5つずつぐらいかな。それ以上になると気力が切れたみたいに立っているのもしんどくなるよ」
ロルトの話に区切りがついたところで、ロルトの杖をアマルダが借りて、いつもと同じように水魔法の発動を試してみるがそれでも上手くいかない。水魔法の触媒も使用していないので、魔法発動体の変更に効果が無いのか確定ではないが、ユリアンネとアマルダがそれぞれ練習で使っている杖では、ロルトの火魔法も小さくなることは確認できた。
そのアマルダのお試しが失敗だったのを見届けたところで、ゴブリン処理が終わったと声がかけられて、移動を再開する。