ルードルフへの道
国境を越えてから北上する一行であるが、モンヴァルト山脈の東側とは違った風景に驚く。あちらは主街道とその街メイユより南は、草原、森、平原であった。こちらは平原と呼ぶより荒野という感じの土地が続き、農業をすることはかなり厳しいと思える。
「このルオルゾン領、東側はまだ平原という感じで農業するエリアもありますが、全般的に北部の主街道付近以外は栄えていないのですよ」
休憩時にクロリスが教えてくれる。
かなり早い段階で、“選ばれた盟友”の6人がいずれもトリアンの街で商人・職人の子供であったこと、将来は商人になりそうであることを知ったクロリスは、先日の税金の勉強会も含めて何かと教えてくれるようになっている。
「もちろん私も商人。下心はありますよ。良い取引先が増えれば良いと思っています」
とおどけて言われはしたが、本当の商人になったときでも、大商人のクロリスと取引ができるとは思っていない。人が良いことの照れ隠しであろうが、そういう人物が商売を成功させるのであろうと理解している。
荒野では巨蜘蛛ジャイアントスパイダーや岩亀ロックタートル以外に巨蟻ジャイアントアントや巨蠍ジャイアントスコーピオンとも遭遇した。巨蜘蛛、巨蟻はDランク魔物であるが、岩亀、巨蠍はCランクである。
“選ばれた盟友”の6人のうち武技が使えるのはシミリートとユリアンネの2人のままであったが、残り4人も先輩冒険者の指導によりCランク魔物で硬い装甲の魔物に対してダメージを与えられるようになって来ている。
「どうだ、このスコーピオンの殻で鎧を作らないか?」
先輩冒険者のウィンデルが声をかけてくる。確かに6人の装備は革鎧であった。女性3人はなめした革を重ねたものであり、男性3人はさらに厚い皮をワックスで煮込んで硬化処理したものであり、いずれも皮革屋のゾフィの実家で調達したものである。
全身を蠍の外骨格で製作する方法もあるのだが、それほどの素材は集まらなかったので、各自の胸部や腕部など一部を強化する程度になりそうである。
ちなみに、先輩冒険者4人のうちアントニウスは体力等の問題でローブの下は布服を、テルマはおしゃれな革鎧を、そしてウィンデルは革鎧と胴体だけ板金のハーフアーマーを、たくましいソフィアンはスケイルアーマーを装備しているため、蠍の素材は不要らしい。
シャドウとフェザーも故郷から使い続けている物があるため強化はしないとのこと。