トルトヴァの街2
会頭のクロリスが、税金のことについて若者たちに解説してくれる。
「お気づきのように、ダンジョンのあるトリアンなどでは元々税収も多いので、商人の通行税をたくさん取らなくても行政が成り立つのはあります。また、素材がたくさん取れるので余らせるよりは流通させて経済がまわる方が更に税収が上がるという考えです」
「トリアン以外の街もそんな高そうでなかったですよね」
「えぇ、ストローデ領自体が領都トリアンの収入があるだけでなく、モンタール王国全体もその恩恵を受けていますので」
「では、このステルビア王国では」
「はい、トリアンダンジョンのような資源はありませんので物不足ですし、税収が少ないので通行税などでまかなう必要があります」
「国境なんて、あの道を通らないとか、魔法の袋にしまって隠してしまうとか出来ますよね?通行税を払わないために」
「出来るか出来ないで言えば出来ます。ただ、冒険者が少量をするのではなく我々のようなそれなりの規模の商人がそれをすると影響が大きいので、見つかった場合の処罰は厳しいものになります。また、我々は街道の整備、具体的には魔物や盗賊の排除などの恩恵を受けていますので、その費用負担はすべきだと思っています」
「それと、貨幣が違いました」
「そうですね、貨幣の発行は国家がしますので、国ごとに変わります。ただ、国民の利便性のために貨幣の相互流通を図るようにかなり昔に制度整備がされました。価値は同等になるように、例えば金や銀の含まれる量は同じにしていますので、基本的には同じように使えますよ。特に銅貨や銀貨ならば。他国の金貨をたくさん使うと嫌がられますが」
「国家をまたぐ移動をする冒険者ならば、魔石など貨幣価値の高い嵩張らない物を持ち歩いて必要に応じて換金する手段もよく取るぞ」
“選ばれた盟友”6人の実家はそれぞれ商売に関係するところであったが、店舗を構えており旅商人や通行税などの話は知らない者も多かった。
前世記憶の学校のような物がないので、社会科のようなものは縁が無ければ知らないまま一生を終えるのも普通なのだとユリアンネはこっそり考える。




