国境
無事に平原も通り過ぎて国境である山脈の手前まで南下した時に、街道沿いの少し大きめな建物が見えてくる。
向こうもこちらの集団に気付いたようで、建物から槍を手にした鎧姿の男達が数人出て来る。
「お仕事お疲れ様です。ご覧のように商隊を率いておりますクロリスと申します。山脈を越えてステルビア王国側に向かう予定です」
「ふむ、そうかお前達がクロリス商会か。念の為に積荷の確認はさせて貰うぞ」
国境警備の兵達は馬車4台に分かれて荷台に上がるが、
「ここにもメイユから魔物発生の連絡は来ている。北方は大変だったようだな」
との軽い雑談も含めながらのため、形ばかりの検査のように見えた。最後に通行税を支払い無事に出国となる。
国境とはいっても国境の壁も作られていなく、街道沿いに建物が一つあるだけである。
「国境って、この線を越えたら他国って感じじゃないのですね」
「単なる平原などならそうなるが、川や山が国境ならば、互いにその手前に拠点を設ける感じだな」
旅慣れていない“選ばれた盟友”の6人はそれぞれ近くの御者や先輩冒険者に教えて貰う。
前世記憶でも島国日本を出たことがなかったユリアンネは、テレビで見たことのある外国の陸続きの国境をイメージしていたので少し違和感があったが、現実的な運用に納得する。
そしてその山脈である。
ここでは冒険者ギルドでの情報では、巨蜘蛛ジャイアントスパイダーが発生しているらしい。そしてたまに岩亀ロックタートルにも遭遇することがあるという。それぞれDランク、Cランクに設定されている魔物であり、数が極端に多くなければ脅威ではない。
モンヴァルト山脈ほど高い山でもなく、そこで遭遇した魔物ほど高ランクではないことから、安心して山を登っていく一行。