アンハン西の盗賊
商隊でも戦闘力がなさそうな商人に対して、どこかから現れた男が剣を突き出していた。
「言うことを聞かないとこいつらの命は無いぞ!」
まだハイオークファイターと戦闘している者もいる中で、その騒動に紛れて盗賊が人質を取ろうとしているのである。
「やはりな」「テルマ!」
ウィンデルがつぶやき、仲間の名前を呼ぶと先ほどから姿が見えていなかった女性弓士が矢を放ったようで、商人に剣を突き出している腕に矢が刺さる。それを機会と見たシミリートが商人との間に入り込み、怪我をした男の剣を手にしている槍で叩き落とす。
最初に野営に逃げ込んで来ていた男たちもハイオークファイターたちのことは無視して商隊の皆に切り掛かってくるが、心づもりされていた冒険者たちに順次撃退されていく。
ユリアンネ達は下手に盗賊を相手にするよりも魔物相手の方が手加減の心配もいらないので、残っているハイオークファイターの始末に注力する。
結果、かまど周りに集まっていた商人達が怪我をすることなく、襲ってきた盗賊と思われる男達、合計7人を捕らえた横で、ハイオークファイターの死体を3体転がすことになった。
「どう言うことか教えて貰おうか?まぁ、狙った俺たちの人数が、この街道を通る割に多くて躊躇しているところに、魔物が来たからこれ幸いと便乗しようとした程度のことだろう?」
武器を取り上げて縛りつけた盗賊の1人の猿ぐつわを外して尋問を始めようとするウィンデル。しかし、そのかまど周りに集まっている集団の中に矢が何本も飛んでくる。
「くそ!馬車を盾に身を守れ」
そうすると今度は馬車に火矢が放たれて来るため、馬車の前に出てその矢を払い落としたり、ユリアンネのように水をかけたりする必要が出てきた。
「このままではまずいぞ!どうする?」
とウィンデルがアントニウスに声をかけたあたりで、火矢も飛んで来なくなった。
疑問に思っていると、遠くの方で悲鳴が聞こえてくる。