アンハンの西3
アンハンの街の西にあるモンヴァルト山脈で野営をしている商隊。見張り番以外の皆が寝静まった頃、野営場所から少し離れたところで騒ぎが起こる。
「何だ、こいつら!うわー、助けてくれ!」
見張り番であったヨルクとゾフィも、商隊とは離れた岩場の方からの叫び声に顔を見合わせる。ただ、何かが起きていることは確かであり、皆を起こす。
「皆んな起きろ!何か起きている!」
順次目を覚まして武器を手にした者が増える中、かまどの火を頼りにか、見知らぬ男たちがハイオークファイターを引き連れてやってくる。
「何だお前達!」
「魔物だ、助けてくれ!」
誰何にはお構いなく支援依頼を叫ぶだけである。
ウィンデルはアントニウスに顔を見合わせてから叫ぶ。
「シミリート、お前達8人でそのファイター2体に対応するんだ。俺達は他に備える!」
「え?あぁ、分かった!」「ジモ、こっちに来い!」「シャドウはこっちだ!」
シミリートも状況を理解し、もう1人の盾役のジーモントと一緒にハイオークファイターの前にそれぞれ飛び出る。ユリアンネとゾフィの遠隔攻撃、ヨルクとカミラによる近接攻撃の6人の息のあった陣形で対応する。シャドウとフェザーの2人もそこに混じる。
Bランク魔物ではあるが、銅級冒険者のシミリートとユリアンネとシャドウで3人、その他にも5人が居るため劣勢になることもあるが何とかしのげている。
その横でさらに別のハイオークファイターも岩陰から現れて、そちらには連れてきたと思われる男たちと一緒にウィンデル達が対応しているようである。
ユリアンネの≪火炎≫がとどめとなり倒れた1体目のファイターの首にヨルクが念のために戦斧を振り下ろしている。そして余力ができたシミリートは気になっていた場所にそっと移動すると予想通りであった。
「お前たち、変な動きをするなよ!」




