アンハンの西
翌朝、アンハンの街の西門から出発した集団。クロリス商会の会頭クロリスに率いられた馬車4台と騎馬7頭。主街道から離れたこの街からモンヴァルト山脈に向かうには珍しい規模の商隊である。
「俺たちもこの道が山脈を越えてルオルゾン領につながっていることまでは知っているが、通った経験は無い。油断するなよ」
商会専属の冒険者リーダーのウィンデルが注意喚起を行う。
「先日も街の北でオーク達が発生していた。ここでも油断しないように」
アントニウスもかぶせて発言するが、皆からは呼び水になるのでは?と揶揄われている。
そして覚悟していたように、小休憩の際にまたしてもオークが20体ほどで襲ってくる。皆がそれなりに余裕を持って倒せる量であったので、ユリアンネは良い機会として≪風刃≫の実践練習も行う。同様に実践機会があまりなかった≪石球≫もついでに試している。ゾフィも接近戦になった時にはショートソードをぎこちなく試しているようである。
それぐらい余裕で撃退し、手分けして必要な部位のみを回収しているところで、クロリスとウィンデルが打ち合わせをしている。
「このまま西に向かうべきか迷いますね。本来この道はオークの出る場所では無いはずですよね」
「はい、昨日も冒険者ギルドで確認して来ています。ここは森狼程度のはずです。どうしますか?引き返しますか?」
「この経路まで諦めると、モンヴァルト山脈を越えることを諦めること、つまりモンタール王国内での移動を諦めることになりますよね。さらに南下してステルビア王国を通ることに。できれば避けたいですね」
「分かりました。もう少し西に向かってみましょう」
オークの死体の解体、魔法の袋への収納などが終わり、再び西に向けて出発する。
本来見かけるはずであった森狼を、時々は遠目に発見することはあっても、戦闘になることもなく、昼休憩を取れそうな空間に辿り着く。