クロリス商会の護衛3
シミリートとヨルクが斧槍使いのソフィアンを、ジーモントが片手剣と盾を使うウィンデルの動きを見て学んでいた時、カミラとゾフィも先輩冒険者のテルマを見ていた。
彼女はショートボウとショートソードを扱い、オークが遠くにいる間には弓矢で攻撃していたが、近づいた時にはショートソードに持ち替えて、大きな体格のオークに対して対等に近接戦もこなしていた。女性なので力で勝負するよりも身軽さを活かして回避しながら、大振りさせた敵の隙をついて攻撃している。
近接戦もこなせる素早さと体力があるからか、弓を射る際にも自ら射線を確保するために敵味方の動きを把握しながら右に左に動いていた。そのため、敵味方が入り混じった今回の混戦状態においても、ゾフィに比べて矢を放った数がかなり多い。
さらに、ゾフィは近接状態になった際には使用する武器がダガーしかないため、体格に大きな差があるオークのような敵の場合、対峙することが難しい。
ゾフィはショートソードを得物にすることも考えようと呟いたところへ、カミラが教えてあげるよ、と耳打ちしている。
一方、ユリアンネは同じ魔法使いのアントニウスがやはり気になっていた。
最前線には立たず遠くから初級風魔法の≪風刃≫を、触媒は使っていないが緑色の魔法陣を浮かべ詠唱して発動させていた。
一方、ユリアンネは触媒、魔法陣、詠唱を使用せずに中級水魔法の≪氷刃≫を発動していたので、戦闘が終了した際に、逆にアントニウスから話しかけられる。
「ユリアンネだっけ?すごいじゃないか。俺は≪火炎≫も使えるがここは森の中で延焼を避けたいし、皆が強いみたいだから無理に火魔法を使う必要がなさそうだし、苦手な風魔法にしたんだ。確か≪火炎≫も使えていたよね。それで≪氷刃≫も使えるのは将来が楽しみだね」
「そんな。≪風刃≫を使えない私にするとアントニウスさんは流石だと」
「おや、そうなのかい?もうこれ以上読まなくて良くなったから、譲っても良いよ」
≪風刃≫だけの魔導書ではあるが風属性では初めての攻撃魔法であり、アントニウスの提示して来た金額を喜んで支払うユリアンネ。
思わぬところで新しい魔法習得の機会を得たユリアンネ。迷宮都市トリアンに比べると途中のモンブロワ、コルバック、メイユの街の規模では期待できる内容の書店も無かったので、ありがたい。