クロリス商会の護衛2
メイユから南に向けて出発したクロリス商会一行。
街を出てしばらくは草原が続くのだが、そこまでは角兎ホーンラビットなどの魔物しか遭遇しない平和な状態であった。
しかし、アンハンの街への行程半ばほどからは、モンヴァルト山脈の下半分と続く森になる。その森で行った、この行程2回目の野営の際に、オークの集団が襲って来た。
「所詮はオークだ。簡単に蹴散らせるぞ!」
オークの数は20体以上であったが、商会専属冒険者のリーダーであるウィンデルの言葉の通り、10人以上いる冒険者に撃退される。
前回の山脈越えの際には、雇用主の商人側であるウィンデルたちが力を振るうことのない役割分担にするか、もしくは他人の様子を見るほどの余裕の無い戦闘ばかりであった。今回ようやく近くでしっかり見ることができた。
鍛冶屋として冒険者の武器に興味がある上に自身も斧を使うヨルク、そして槍を鍛えているシミリートは特に、斧槍と呼ばれるハルバードを扱うソフィアンを見ていた。これは槍のように長い柄の先端に槍の穂先がありつつ、先端の手前には戦斧があるような武器であり、槍の得意な“突く”だけでなく、通常の槍の穂先よりも斧部分で強力に“斬る”こともできる物である。重量もあり習熟は難しい武器であるが、たくましい体格のソフィアンはしっかり使いこなしていた。
シミリートは槍術の先にあるものの形の一つとしての、ヨルクも自身のバトルアックスとは違った形の斧の動きの学びになった。
ジーモントはショートソードとバックラーを使用するので、ブロードソードとバックラーである良く似た装備のウィンデルをよく見ていた。
野営中であったので、騎乗ではなく地上で両足をしっかり地面につけて、盾で身を守りながら合間合間に片手剣で敵に斬りつける姿を見ている。動きそのものは自身やシミリートが行っていたことと大差はないはずであるが、敵の攻撃をうまく盾でさばいて相手の重心を狂わせて隙を作ったり、盾という大きな物で敵の視界を邪魔したり、何かと見習うべきものを見せつけられた感じがある。
きっとウィンデルも見られていることをわかっていて、わざと参考になる動きをしたのだと思われる。




