モンヴァルト山脈の入口2
再出発したユリアンネ達の後発グループは、少し進むと戦闘場所であったと思われる場所を通る。ハイオークの死体は食材などのために回収したはずであるが、地面には血が垂れたあとや、木々に焦げたあとが残っている。
“赤熱の龍霊”リーダーのアリベルトが杖を所持していたので彼が火魔法を使用したのかもしれない。戦闘できる魔法使いは少ないので、ユリアンネは同じグループであれば他人の魔法を見る機会だったのに、と少し残念に思う。
その戦闘していたはずの先発グループは既に見える範囲にはおらず、それなりに先に居るのであろう。
「ヨルク、余計なことは言わないでね」
「もちろん分かっているさ。ハイオークの肉が食べたいなんて言わないよ」
「!」
小休憩で馬へ水やり等を行いながら小声で話していたゾフィとヨルク。ゾフィが慌てて周りを見渡すが、その小声を耳にした人は居ないようであった。
しかし、運命の女神はフラグが好きなようである。小休憩を終えて出発しようとしている気が緩みかけたところで騒ぎが起きる。
「敵襲!」
女性の声であり、おそらく“優美なる冒険団”の誰かと思われた。声の方向を見ると、森の奥から走って戻って来ている。花を摘みに行っていたところを狙われたのだろうか。
その後ろに棍棒を手にした数体のハイオークが見える。
「俺のせいじゃ無いよな?」
「知らないわよ」
ヨルクとゾフィが小声で会話して声のしている方に向かおうとしたとき、ラインハートが叫ぶ。
「集まり過ぎるな!」
ハッと我に返ったヨルク達が改めて周りを見渡すと、別の方向の森の中からもハイオーク達がやって来ている。