フェザーの治療方法
宿に戻りユリアンネとしてはようやくフェザーから、彼女の治療方法を学べると内心喜んでいる。
とは言っても、まずはこの地方の薬草から回復薬やポーションを製作する手順を、自分がフェザーに教えることからである。
魔法回復薬の調合の手順は、簡単に言うと、洗浄、乾燥、粉砕、分離、溶解、励起である。すでに購入して来た薬草は洗浄と乾燥は終わっているため、薬研で粉にして、篩にかけて不純物を取り除き、魔法で生成した水に溶解する。ここまでで通常の回復薬が完成し、最後に溶けている回復を促す要素を魔力で励起させることで魔法回復薬、つまりポーションになる。
ユリアンネはどうせ購入した薬草から大量にポーションを製作するつもりであったので、フェザーに見本を見せること自体は苦労ではない。工程ごとに説明を行いながらになった程度である。
都度うなずいていたフェザーであるが、いざ自身でやらせてみると薬研の使い方に戸惑っていて、粒子を細かく均等にすることができないようであった。また、溶解する水はユリアンネが≪水生成≫した水を使用したのだが、最後の魔力を込めて励起するところも実施したことがなくなかなか感覚が掴めないようであった。
結果、回復薬とポーションの各段階で≪簡易鑑定≫すると低級中位と低級低位という結果であった。慣れて行けば追々品質も向上するとは思われる。
口数が少ないフェザーに、作業の違いとして故郷のやり方を聞いていくと、薬研を使用した粉末にする作業は存在しなく、乳鉢と乳棒の組み合わせのようである。そのため飲み薬や粉薬ではなく、塗り薬になっていたのだと思われる。他に丸薬もあるようだがフェザーは未習得とのこと。
また、魔力を回復薬に直接込める方法では無い理由を聞くと、使用した際に呟いていた呪文は、生命を司る大地の精霊に祈りを捧げていたからとのこと。魔力を精霊に捧げて、塗り薬の効果を高めていたようである。
ポーションでは無いのに、シャドウの怪我がすぐに治っていたのは、傷回復薬である塗り薬と、精霊による回復魔法の複合であったと理解するユリアンネ。
自身が魔導書で学んできた以外の魔法形態が、“極東の輪舞曲”の呪符以外にもまだあることを学び、薬師としても色々な治療薬があると知るのであった。