2度目の護衛での野営
「のんびりして遅れるわけには行かない。早く出発するぞ」
調理した肉を分けたことでその時だけは穏やかになった気配があった依頼主ドミニャスであったが、食べ終わったら直ぐに出発を促してくる。
依頼主には見えないように、やれやれ、という顔を互いにしてしまう。
半日御者をして慣れて来たヨルクとカミラがスムーズに出発をし、それからは馬のための小休憩を挟みながら順調に道を進む。
夕方に野営地に到着するまでの間に発生した森狼との戦闘は1回だけに抑えることができた。
昼食の際に少しは減ったが、魔法の収納袋には全てを入れられるわけはない。魔石や必要な部位以外に、この旅の間に食べると思われる量の肉を残し、それ以外は森の中に捨てていく。
野営地に他の旅人はいなかったので、馬車を平行に並べ馬をその間に、真ん中にかまどを設置して野営準備を行う。
昼食の時よりも準備時間があるため、森の中で適当に食べられそうな野草も採取し、森狼の肉も焼いて塩を振るだけでない料理にジーモントが変えてくれる。
それを分けても依頼主は相変わらずであり、そういうものだと皆は認識する。
前回の護衛依頼が恵まれていたのは、トリアンの冒険者ギルドでは顔見知りというのもあり、良い依頼主と先輩冒険者パーティーを割り当ててくれたのだと推測する。逆にモンブロワでは不人気の依頼主を一見さんの冒険者に対して割り当てられたのかもしれない。
致命的に困った依頼主では無いので、これも経験と割り切って後2日間を何とか乗り切るしかない。
見張り当番の組は、トリアンダンジョンで野営するときに慣れたヨルクとゾフィ、シミリートとユリアンネ、カミラとジーモントとなった。
先輩冒険者のアルフィルの、女性をペアにしたり銅級と鉄級のバランスを取ったりという采配を経験した後であり、シミリートは見直しを相談したが、慣れた方が良いという皆の意見の結果である。