刺客のその後
先ほど城門の衛兵に預けたヴァレマンとリリアンナのその後の話を聞きに来たシミリート達。
彼らの所持物のうち捜査に関係は無いとされた財布、武器、魔導書と、犯罪奴隷の売却代として1人あたり金貨1枚を渡される。
気が回っていなかったユリアンネが武器を鑑定してみるが、ヴァレマンの片手剣2本は中級中位、リリアンナの杖は中級下位、そして例の短剣は中級上位の何か特殊効果ありだった。
魔導書は想定通り土属性の初級魔法≪土生成≫≪石球≫であった。
思わぬ収穫にニヤけるが、それよりも犯罪奴隷にした2人の情報が欲しいと我にかえる。
「きっと一般人が聞いても教えてくれないだろうから、ここは俺だけで」
シミリートがトリアンの衛兵の身分等を用いて情報収集してくると分かれ、宿屋で合流することになった。
はじめての街の店を見てまわるにも既に飲食店以外は閉店する時間帯であり、ヨルクの希望通り屋台で買い食いをしながら宿に帰る仲間達。
ユリアンネは昨日の朝にオトマンに貰った≪氷刃≫、今回の≪土生成≫≪石球≫の3魔法の習得、写本の生成などやりたいことはたくさんであり、昨夜に襲われたことはいったん忘れるため現実逃避に入る。
そして夜になり帰ってきたシミリートが情報共有してくれた内容は次の通りであった。
2人とも“蒼海の眼”クランの残党であり、2人が不在の間に大捕物があったらしい。
リリアンナは土属性のみの魔法使いで、火属性などに比べて攻撃力も微妙なため農村に行けば良いと揶揄われていたのを引き取ったのがこのクランで恩義を感じていたとのこと。悪いことをしている認識もあったが、クラン内で出来た恋人であるヴァレマンとの関係もあり、自分の居場所を守るのに精一杯だったと。
トリアンに戻ってきた2人に復讐をそそのかしてダガーを渡してきた相手の名前や人相は控えてトリアンの衛兵団に通達したので、そのうち捕まるだろうとのこと。
気になる発言があったのは、“闇ギルド”の単語である。“蒼海の眼”は悪評があっても冒険者ギルドに登録した、まだ表の世界の者たちのクランではあったが、闇ギルドは名前の通り裏の世界の者たちの集団であり、捕縛から逃げ延びた元“蒼海の眼”の者たちがそちらに流れる懸念がある。