刺客の後始末
「多分これがそのダガーだろうな」
エミリアンが、先ほどの戦闘場所の近くから拾って来た短剣を見せてくる。
騒動で全員が起きているなか、ユリアンネを襲う刺客になったヴァレマンとリリアンナは、後ろ手で縛り直され猿ぐつわもやり直されて転がされている。
「で、話を整理すると、皆さんはトリアンで話題になっていた、悪名高い“蒼海の眼”クランの大捕物に関係していたということですか?それで恨まれていて、残党かそれに雇われた刺客に襲われたと」
「はい、でもあの女性の発言の感じではクランの生き残りと思います」
「そうか。本当ならば色々と聞いておきたいが、猿ぐつわを外すと自殺しかねないからな。目的地のモンブロワで衛兵に引き渡すか、面倒だからここで殺しておくか。返り討ちにしただけで人殺しの罪にはならないぞ」
「少しでも情報が得られるかもしれないので衛兵に引き渡す方をお願いできますか」
自分が衛兵であることは内緒にしたままであるが、シミリートの発言に皆がうなずく。
「じゃあ、興奮しているかもしれないが、まだ夜中だ。明日のモンブロワまでも魔物の襲撃があるだろうし、寝る時間割の人間はきちんと寝ること」
パンパンと両手を叩いて、これで話は終わりとアンフィルがその場を締める。武器を取り上げたヴァレマンとリリアンナも、縛り縄が緩んでいないことを確認した上で荷馬車に放り込む。
リスチュー、ランセリアとカミラ、ジーモントの4人が見張り番となり、他の者はとにかく目をつぶり少しでも睡眠をとることにする。
ユリアンネも興奮はしていたのだが、目をつぶってしばらくしていれば何とか眠りに落ちたようである。
翌朝、ヴァレマンとリリアンナが乗っていた馬の扱いに困ることになったが、2人の身柄等は撃退したユリアンネとシミリートの物と言われる。
どうせ馬車のゆっくりした移動なので訓練のいい機会と言われ、片方は経験があるシミリートが騎乗する。もう1頭にはユリアンネ?という会話をしていると、アンフィルから
「魔物に遭遇したときの遠隔攻撃を確実にするため別人にするように」
と指示され、ジーモントが練習することになった。