刺客2
シミリートは、ユリアンネの声らしきもので目が覚めたが周りにその気配はなく、見張り番のはずの誰も居ない。間違いならば笑い話で良いと、かまどの鉄鍋を鳴らし、皆に起きるように叫ぶ。
ユリアンネを探しキョロキョロするなかで、馬車の隙間の向こうから炎が見えた。
「ユリ!」
寝る際に左腕から盾は外していたため、最近は主武器に変えようとしている短槍をつかんだまま走り出す。
馬車の円陣の外が見えると、2人組冒険者だった男女に挟まれるようにユリアンネが地面に転がっている。
「お前達!」
男は地面から剣を拾おうとしているところだったが、女は杖を構えてユリアンネに魔法を発動している気配であった。駆けつけるにも間に合いそうに無いため、たいして練習もできていないままだが、短槍を女にめがけて投げつける。案の定、狙った胴体に当たりはしなかったが、どこかにかすったのか怯ませることはできたようだ。
そしてその走った勢いのまま左腰から抜いた片手剣で男に切りつける。
残念ながら拾い終わっていた片手剣2本を盾にされ、男には何のダメージも与えていないが、少なくともユリアンネからこちらに注意を向けさせることはできた。
「何なんだお前達!なぜユリを狙う!」
「問答無用!」
時間稼ぎにはできなかった男の返事だが、男がこちらに正面を向けているだけで十分だ。ユリアンネは女魔法使い相手に1対1ならば勝つか逃げ切ることはできるだろうと思って見ているが、ユリアンネが立ち上がる気配が無い。
「何をした!」
怒りに任せて片手剣を振るうが、相手の2本の片手剣が邪魔をする。片手剣の武技≪斬撃≫を使っても上手く避けられる。焦りが募る。